施設入所
80代男性。一人暮らし。大腸がんを患い人工肛門(ストマ)造設しての退院であった。
一人でストマの処置ができないため、訪問看護が入ることになる。
きれい好きな患者さん。冬はストーブの上でアルミホイルにサツマイモを包み
焼き芋をつくっていた。部屋中、いい香りがしていた。漬物もつくる器用な方だった。
知人にお金をだまし取られ、貯金がなくなり、生活保護となった。
安いアパートに転居。
それまで民生委員やヘルパーさんの支援を受けながら生活できていたが徐々に、一人暮らしでは不安な要素が見え隠れしてくる。
料理ができなくなる。近くのスーパーに惣菜を買い物に行くが、一か月の予算を無視した金額の買い物になっていく。お金が足りないと市役所に抗議にいく。
市役所からは一人暮らしが難しいのではないか、施設入所を勧められる。本人拒否。
次は、自転車で外出し、家がわからず帰ってこれなくなった。大家さんがうろうろしている本人をたまたま見つけ、なんとか帰宅できた。自転車、かばん、衣服など住所、名前を記載した。
「もう一度施設考えませんか?」「そうだな。見に行ってみるか」
施設見学し、きれいな施設と喜んでいたが、いざ話が進んでいくと、「やっぱり、やめる」と言う。
看護師が配薬カレンダーにセットした薬が飲めなくなった。ぐちゃぐちゃにしてしまう。自転車で転んで怪我をした。幻覚症状が出始めた。
ケアマネ、大家さん、市役所職員、訪問看護師説得し、施設入所となった。しばらくは
施設へ訪問看護師がストマ交換に出向き、今までの生活の関係性が切れていないことを強調していった。
施設スタッフも丁寧に対応して下さり、1か月もすると完全に施設に慣れ、その中で自由な生活を送れるようになった。施設の看護師さんにストマ交換方法指導し、訪問看護は終了した。
本人は今でも自由に暮らしたいと思っているだろう。しかし現実は厳しい。事故にあったら誰が責任をとるのか?火事でもだしたらどうするか?
これから増える独居の高齢者。まだ施設に入れる方はいいが、そうでない高齢者をどう支えるのか・・・私たちの抱く不安を、行政は理解できているのだろうか・・・
誰しも、その場にならないと対応できないのが現実である。