samansa59’s blog

訪問看護の仕事の中で感じたことなど自由に書いていきます。

生きる目的

80才男性。胃癌の術後で寝ている時間が長く体力が低下していた。

手術は上手くいき、転移もない。きちんと栄養をとり、リハビリをして

体力の回復を待てばいい状態であった。

夫婦二人暮らし。寡黙な患者さんは、妻とほとんど会話しない。ケアマネが勧めるデイサービスは拒否。一日中寝ていることが多くふさぎ込む夫を、何とかしてほしいと妻から訪問看護の依頼があった。

胃が1/3しかないため、こまめに食事をすること・量が確保できないので栄養補助食品を利用すること・生きるためには食べないといけないこと・筋肉は自分で動かさないとつかないこと・動かない、刺激のない生活では認知症になる可能性あることなど少しづつ説明していった。毎回、声をだしながら床上リハビリを行った。

訪問看護が入らない日も自分でトレーニングするようにチェック表を作成し、リハビリを行ったら○印をつけて頂いた。

誰かが意識的に関わることで、人間の行動は変わる。

毎日朝晩、自ら声を出し、リハビリを行って下さった。栄養補助食品を奥様が薬局で購入し毎日飲んでいた。訪問看護の度に、「力がついてきましたね」「歩けるようになったら何がしたいですか」と励ました。

「看護師さん聞いて下さい。ここのところ毎日近くの喫茶店に行っているんです。買い物もカートを引いてします。自分一人で入浴できるようになりました。」

奥様の嬉しそうな声が響く。

「これから、何を目的に頑張っていきましょうか?」

「もう少し歩けるようになって、孫の家までいきたい。息子や孫の手助けをしたいと思っている」

寡黙な患者さんが、話して下さった。誰かの、役にたちたいと思っている。

生きる目的。

目的のために何をするのか・・・患者さんの行動変容を促し、生きることは何かを考える機会を与えていくのも訪問看護の仕事である。