在宅は医師で決まる
70歳男性Kさん。糖尿病、脳梗塞、神経因性膀胱でほぼ寝たきり状態。
認知症の周辺症状である妄想、暴言・暴行行為が激しかった。
バイタルサインを測ろうとすると、暴言とともに看護師に殴りかかる、枕を投げる
妻が静止しようと手を握ると、妻の腕を思いっきりつねる。妻の両腕は内出血痕で真っ
黒になっていた。医師が往診すれば、先生に向かって唾を吐いた。精神症状を鎮めるた
めに薬の処方を医師に依頼しても、「性格だから、仕方ない。あんなんでは、何もでき
ん」と言われる。入院での症状コントロールをお願いしても、医師は必要ないという。
Kさんは、好き嫌いが激しく、ごはんは食べず、菓子やジュースしか飲まない。夜中中
騒ぎ、家族中眠れない日も出始めた。
暴力行為がエスカレートすると、妻はKさんの手を縛るようになった。
在宅介護の限界だった。往診している医師が高齢で、この患者の症状を上手くコントロールで
きていなかったし、まずご家族と患者さんの立場にたって、なんとかしようと考えない
医師であった。唾を何回か吐かれたことで、内心良く思っていなかったのかもしれな
い。妻に入院して症状コントロールしては?と持ちかけたが「恥ずかしくて入院なんかできな
い」と言われ、打開さくがみつからず、同居する長男さんに話をした。長男が母親を説
得。長男から在宅医にお願いしてもらった。医師は不服そうな態度をしめしたが、病院
に紹介状を書いてくれた。入院し精査するとともに、精神科医師の介入で暴力行為がな
くなった。結局、高血糖、電解質バランス異常などもあり、症状が悪化していたのであ
る。
長男の判断で、退院後は別の医師に往診を依頼された。看護師のケアも、暴言はある
程度みられるが、殴られることはなくなった。その医師は、看護師の話を良く聞いて下
さる。自分が考えていることを伝えて下さり、普段の看護師の報告も丁寧に聞いて下さ
った。
家族の医師への信頼度があがり、医師・看護師間も協働体制が整った。
在宅はチームで支えないといけない。チーム(家族も含め)間の連携と信頼(お互いを
尊重する姿勢)が不可欠である。
在宅は医師で決まるといっても過言ではない。