samansa59’s blog

訪問看護の仕事の中で感じたことなど自由に書いていきます。

いろいろな人間模様

ある社長さんのお母さま。胃がん末期状態。できる限り家で看たいという希望で訪問看護の依頼があった。居室は2階にあり、景色の良い庭が眺められる。

訪問すると常に長男がいた。看護師のさまざあまな提案に対して、「そんなことは望んでいない。点滴だけやってくれればいい」と言う。それでも、私は本人にしたいこと、やりたいことはないか聴いた。「庭が見たいから、廊下の椅子に座らせてほしい」

「無理するとあとでえらいから寝ていたほうがいい」「私は絵手紙が好きで、今までいろいろ書いたのよ」「その作品みたいですね」「そんなものは昔の話だ」・・・

本人の希望や要望は、ことごとく却下されていく。次男や長女はいつも来訪するが、すぐ帰っていってしまう。

この長男は、最期に何をしてあげるつもりなのか・・・

もう一人、脳腫瘍の末期の患者さん。女性。最期を家で過ごしたいと帰宅。子供さんが3人。孫が6人。患者さんのことを皆でKちゃん、Kちゃんと呼ぶ。夫は、仕事以外、常にそばに寄り添い、声をかける。訪問すると、ベッド横でうたた寝しているので「少し休まれてはどうですか?」と夫にいうと、「残り少ない時間、そばにいたいんだ」といい、かいがいしく世話をする。そばでは、お孫さんがおかしの奪いあいをして大騒ぎをしている中、本人は穏やかな笑みを浮かべる。本人が少し痛い顔をすると、お孫さんがそばにきて「Kちゃん痛いの?どこが痛いの?さすってあげる」という。5歳の女の子のその手は、天使のように見えた。

いろいろな在宅。いろいろな最期。さまざまな人間模様がある。