癌と向き合うために
近医からケアマネも含め訪問看護に早急に入ってほしいと連絡があった。
早々に患者様宅へ訪問する。60代女性膵臓がんの肝臓転移。
居間のソファーに横になっている妻は、右わき腹を押さえ顔が歪んでいる。
「痛み止めは飲んでみえますか?」夫が幾種類もの薬袋を出してくる。
「どれをどのように飲ませたらいいかわからないんだ。こんなに痛がっているのに
あの病院は入院もさせてくれない」
とりあえず処方されているレスキュードーズ服用して頂き、状況を把握する。
妻を夫がかかえトイレに行く。食事はほとんど喉を通らず、ジュース類でしのいでいた。1か月もの間、2階の寝室まで上がれずソファーで過ごしていたと。定期でオピオイド服用していたが全く効かず、お腹を抱えて七転八倒したときもあるとのこと・・・
主治医に報告。市民病院の癌性疼痛認定看護師にも連絡。連携をとって、疼痛コントロール目的で入院させて頂いくことにした。
「え?入院できるんですか?」「御主人もよく頑張られましたね。入院して奥様の痛みをもう少し和らげるようにしていただきましょう」
入院翌日、夫がステーションに来訪された。「1か月ぶりにベッドに横になってぐっすり眠っている妻を見ました。ほっとして・・・本当にありがとうございました」
こういった例はまれではない。癌で通院しているが受診時に十分な指導がなされないために痛みのコントロールがついていなかったり、副作用で苦しんでいたりする患者さんは多い。病院のMSWや退院調整看護師は入院しているの患者さんの退院後の在宅との連携を図ることはできても、通院中の患者さんまで手が回らない。
高齢者世帯が増えた。同伴している家族も高齢で、受診時若い医師からの早口と専門用語の説明についていけないのが現状。そして、たくさん処方される医療用麻薬に対して
「麻薬なんて毒だ。できるだけ飲まない方がいい」という解釈の多いこと・・・
癌を受け止め、癌と向き合うためにもっとサポートが必要だ。
この患者さんは、痛みのコントロールが図れ、在宅へ戻った。そして、夫に見守られ在宅で看取りをすることができた。
どのタイミングで訪問看護に繋いで下さるかが鍵となる。