訪問看護を始めた頃
私が訪問看護を始めた時は、まだ介護保険が始まる前であり、1回の利用料は、老人訪問看護利用料250円+交通費250円=500円であった。
訪問入浴は、月に1回程度しか利用できず、ヘルパーも障害など限られた人にしか訪問していなかった。
仕事を始めたばかりの時には、びっくりする毎日であった。
ベッドのレンタルもないため、患者さんはほとんど布団に寝てみえた。3年風呂に入っていないという色黒の高齢の女性。何とか介助すれば歩けたので、入浴介助した。垢が出て出て浴槽はパン粉をばらまいたように白くなった。洗っても洗っても垢が落ちる。やっとの事で入浴を終えた。色黒だったのではなく、色白な方だった。
食事を食べないからみてほしいという依頼。訪問すると、大きな屋敷に患者さんが見当たらない。「どちらで休まれているのですか?」と聞くと、納屋を指さした。
納屋は電気もなく真っ暗。まず、灯りをつけて下さいと要望する。部屋の隅にうずくまるように小さくなっていた高齢の女性。失禁し、臀部には褥瘡ができていた。いつから食べていないのか?衰弱して声も出ない。家族に命の危険があると説明。救急搬送したが、数日後病院で永眠された。
妻がアルツハイマー病で手がかかるからみてほしいという依頼。訪問し、部屋に入ると私の靴下はぐっしょり濡れてしまった。畳がずくずくに濡れている。尿臭がひどい。畳みに尿が浸み込んでいるのである。部屋の奥の布団に依頼者の妻が横になっているが、問いかけに対して「あーあー」と声がでるだけでコミュニケーションが図れない。布団も尿失禁でべたべた。依頼者の夫は一升瓶片手に酔っぱらっている。夫からどうにか聞き出したことは、水分だけは飲んでいるらしい・・・布団を干し、畳みの上に新聞紙を敷いて尿を吸収させた。妻は、どうにか歩けたので入浴させた。この患者さんも、消しゴムのように肌をこすると垢がよれておちた。
介護保険制度が始まり、昔に比べサービスが整いよい時代になったと思う。
それでも超高齢化時代。制度では補えない問題が山積みである。
私たちが介護保険を使えるようになる頃、この制度はまだ続いているのだろうか。